後鼻神経切断術の長期的にも効果が高く安全性も高いことが証明されました
薬やレーザー手術や等でも治りにくい頑固なくしゃみ・鼻水・鼻づまりに対する後鼻神経切断術の長期手術成績を2022年の耳鼻咽喉科臨床学会で報告いたしました。
また2023年2月には全耳鼻咽喉科医が購読する日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会誌にも掲載される予定です。
鼻水、鼻づまりに対する手術としてはいわゆるレーザー手術や骨の構造を改善させる鼻中隔矯正術や下鼻甲介骨切除術などもありますが、最も根本的かつ長期的にも良好な成績と考えられるのは後鼻神経切断術(9割の方では鼻中隔矯正術も同時に施行します)だと考えております。
下鼻甲介骨を摘出してその裏の後鼻神経を切断するこの手術は有効性が高い事は知られていましたが、
- 長期的にも効果が続くのか
- 短期、あるいは長期の合併症はあるのか
- 日帰り局所麻酔や一泊全身麻酔などの短期滞在でも可能か
などの問題点は以前から指摘されていましたが、その答えとなる報告はありませんでした。
今回この手術を受けて3~16年、平均6.5ヶ月経過した100例以上の患者さんにアンケートにお答え頂き、それを元に問題点を検討しました。
結果
- くしゃみ79%、鼻汁83%、鼻閉97%、日常生活の支障度に対しても89%の良好な有効率であった。
- 主な短期合併症である術後出血の頻度は0.6%と少なく、過去2年では大量出血は認めていない。
- 長期合併症でもエンプティノーズ症候群のような日常生活に支障をきたすような重篤なものは認めなかった。
- 術中疼痛は軽度で、術中出血は少なく、手術時間も短く、局所麻酔下の日帰り手術で施行し得ると考えられた。
との結論を得ました。
論文としての掲載が認められると言うことは、専門の先生の厳しい審査を通らないと掲載されませんので単なる術後の感想文とは異なり学術的に正当性があるということです。
過去にある報告は長くて1~2年で症例数も数十例ですが、今回の3~16年で100例以上であり、そのぶん信頼性が高いと言えます。
当院で手術を受けていただいた患者さんからその後の術後治療、及びデータの使用の許可を頂きこのように貴重な論文とすることができました。
心より感謝しております。
そのおかげで学術的にも認められたこの結果を元ににさらなる良い治療を求めて精進していきたいと思っております。
今後もよろしくお願いします。
参考:このページでは院長・川村が多数の手術や臨床経験に基づいた少し専門的な症状や病気の解説、学会などで得られた最新の知見など少し深い内容を追加していきたいと思います。
やや専門的で難しい部分もあるかもしれませんが、症状や病気の詳しい内容を知りたい方には参考にしていただけると思います。
【レーザー手術や点鼻薬でも治らない鼻づまりの原因と治療法】を追加しました。
【好酸球性副鼻腔炎って再発しやすいの?その時の対応は?】を追加しました。
「副鼻腔炎 (蓄膿症)」「副鼻腔炎 (内視鏡下副鼻腔手術)の手術」「アレルギー性鼻炎の手術」のQ&Aを作成しました。
副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎に関して、患者様からよくある質問をHP上にも掲載いたしました。
ご参考にしてください。
・副鼻腔炎のQ&A追記:https://www.kawamura-jibika.com/empyema/
・副鼻腔炎 の手術Q&A追記:https://www.kawamura-jibika.com/empyema_surgery/
・アレルギー性鼻炎の手術Q&A追記:https://www.kawamura-jibika.com/hf_surgery/
手術件数と診療圏を更新しました。
2019年、2020年の実績を追加しました。
患者さんに複数の手術を同時に施行することもあるため術式別の手術件数は実際に手術を行った患者さんの数より多くなっておりますが実人数はグラフの通りです。
こうしてみますと毎年300人以上の患者さんに手術を行ってきました。2013年から2018年の6月まではほぼ二診体制であり、その間は手術件数が大幅に増加しております。2018年7月以降の執刀は院長のみですが、毎朝局所麻酔下手術行うようにして手術枠を週に8~9件は確保するようにしております。2020年はコロナ禍による緊急事態宣言の影響で手術を一時休止しておりましたので手術数は減少しておりますが、宣言解除後は以前のペースで行っております。
また遠方から手術希望で来院される患者さんも多く、最近数年は過半数を占めております。
なお、このグラフではメスを使わないラジオ波凝固術+鼻内後鼻神経凍結術(いわゆるレーザー手術)はカウントしておりません。