三半規管と乗り物酔い

三半規管と乗り物酔いの関係は? 鍛え方と一緒にご紹介します!

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
ドクターズ・ファイル取材記事
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「バスや電車といった乗り物に弱いので、旅行が楽しめない」という方は意外と多いのではないでしょうか。乗り物に酔うのは、耳の中にある三半規管も弱さが原因です。では、この三半規管を鍛えれば乗り物酔いをしなくなるのでしょうか?

そこで今回は、乗り物酔いと三半規管の関係や、三半規管の鍛え方をご紹介します。今は映画も3D仕様のものが多くなり、新たに3D酔いというジャンルも登場しました。乗り物酔いを何とか克服したいという方は、ぜひこの記事を参考にしてくださいね。

  1. 三半規管と「酔い」の関係
  2. 三半規管の鍛え方は?
  3. 三半規管が病気になると……
  4. おわりに

1.三半規管と「酔い」の関係

まず、乗り物酔いの原因や三半規管の役割をご紹介します。実は三半規管は、私たちの「あれ」をつかさどっている重要な器官なのです。

1-1.三半規管の役割とは?

三半規管は鼓膜の内側、「中耳」にあって音を感じる蝸牛(かぎゅう)という器官と繋(つな)がっています。三半規管は、90度ずつ傾いた3つのチューブ状態の規管でできており、そこにリンパ液が満たされることによって機能するのです。三半規管の役割は、平衡を感じること。この器官のおかげで、人はまっすぐ立っていられます。もし、三半規管に異常が起これば人は激しいめまいを感じ、まっすぐ立ってはいられません。

また、自分がどのような状態になっているか分からなくなるでしょう。試しに、その場でぐるぐると回ってみてください。止まっても地面が揺れているような感じがしたり、自分がどの方向を向いているか分からなくなったりするでしょう。これは、三半規管に満たされているリンパ液がまだ揺れているため、体の状態が分からなくなっているからです。

1-2.乗り物酔いはなぜ起こる?

乗り物酔いは、三半規管と視覚が連動して起こります。自動車や電車などに乗ると、視覚は窓の外を流れる景色で自分の状態を把握するのです。しかし、三半規管は振動や体感によって体の状態を把握します。このとき、視覚と三半規管の情報にずれが生じるのです。

そのため、脳が混乱して自分の体の状態を把握できずに気分が悪くなります。ですから、絶叫マシンなど短い時間で激しく動く乗り物に乗る場合は、目をつぶっているだけで乗り物酔いを防げるでしょう。

1-3.3D酔いの原因は?

最近は、3Dで楽しめる映画も増えてきました。この3D映画を見続けていると、乗り物酔いのような気分の悪さを感じる人もいます。3D酔いの原因もやはり、視覚と体感のギャップです。映画の場合、座席は動きません。しかし、映像は3D効果でまるで本物のように感じられるでしょう。

そのため、視覚情報と体感情報が脳の中で処理できないのです。ちなみに、3Dの場合は座席が動かない分体感と視覚の差が激しいので、乗り物酔いをしない人でも3D酔いをする場合もあります。

1-4.乗り物酔いしやすい人としにくい人がいるのはなぜ?

三半規管は平衡感覚をつかさどっていますが、この機能が生まれつき弱い人もいます。また、体を動かして遊ぶ機会が少ないと三半規管が弱くなるという説もあるのです。平衡感覚をつかむ機能が弱いと、乗り物に乗ったときに平衡感覚をうまくつかむことができずに、乗り物酔いが起きやすくなります。

平衡感覚をつかさどる三半規管が酔いに影響するんですね。
三半規管と視覚のズレが脳の混乱を引き起こし、酔ってしまうのです。

2.三半規管の鍛え方は?

では、三半規管が弱ければ一生乗り物酔いをしやすい体質のままなのでしょうか? いいえ、実は三半規管を鍛える方法があるのです。この項では、その一例をご紹介しましょう。

2-1.乗り物に乗り続ける

電車やバスなど乗り物酔いをしやすい人は、逆にその乗り物に乗り続けると三半規管が鍛えられ、乗り物酔いをしなくなります。これは、古くから漁師の間で行われてきた船酔いの克服法でもあるのです。最初は短い距離から始めて徐々に距離を伸ばしていけば、心理的なプレッシャーも少ないでしょう。

2-2.回転いすに座って回ってみる

事務用のいすなど回転できるいすに腰かけて、勢いをつけて回ってみましょう。最初は気持ちが悪くなるかもしれませんが、何度も繰り返すうちに慣れてきます。自分で回転の勢いを調整できるので、最初はゆっくりと回ってみると慣れやすいです。

2-3.慣れた場所で目をつぶって歩いてみる

目をつぶって歩くと平衡感覚が鍛えられます。家の廊下など障害物が少なくまっすぐなところで、目をつぶって歩いてみましょう。最初はまっすぐに歩くことも難しいかもしれません。なれてきたら、後ろ向きに歩いてみるとなお効果的です。

2-4.子どもには床運動と一輪車がおすすめ

子どもの三半規管を鍛えるには、床運動と一輪車がおすすめです。特に、でんぐり返しは三半規管を鍛える絶好の運動。子どもが小さければ布団の上でもできるので、ぜひ積極的にやらせてみましょう。

また、一輪車も三半規管を鍛えるよい運動です。今は、体育の授業で一輪車をしたりクラブ活動の一環で一輪車に取り組んでいたりする学校もありますから、機会があったらチャレンジしてみましょう。もちろん、大人がやっても効果的です。

三半規管って鍛えられるものなんですね。
乗り物酔いしやすい人は三半規管を鍛えることで改善されるでしょう。

3.三半規管が病気になると……

風邪の菌などが内耳に入りこんで炎症を起こすと、三半規管がうまく働かなくなりめまいが起こります。ひどい風邪を引いた場合や、熱が出て耳が痛くなったときの後にめまいがするようになったら、病院で治療が必要です。「たかがめまいくらいで」と思うかもしれませんが、めまいがひどくなれば歩くのもままなりません。

内耳が炎症を起こしていた場合、自然治癒には時間がかかります。できるだけ早く病院を受診し、治療してもらいましょう。また、血圧が高すぎたり低すぎたりしても、三半規管が影響を受けてめまいを感じます。

三半規管そのものが病気になる「メニエール症」というものもあるのです。どのような病気にせよ、三半規管が影響を受けるとめまいが起こりやすくなるでしょう。めまいは数分でおさまることもあれば、数時間にわたって続くこともあります。このようなときは、静かに横になってめまいがおさまるのを待ってから病院に行きましょう。めまいがおさまったとしても、無理をするとめまいがぶり返します。

耳鼻科を受診して治療を受けなければ、長い間めまいに悩まされることになるでしょう。特に、女性は男性よりもメニエール症にかかりやすいです。めまいが治まらなくなったら、できるだけ早く病院に行ってください。

めまいが起こるっていうのは三半規管が影響を受けているんですね。
歩くのがままならない状態が続くのは大変つらいでしょう。早めに病院に行って治療を受けるようにしてください。

4.おわりに

いかがでしたか? 今回は、三半規管と酔いの関係や、三半規管の鍛え方についてご紹介しました。

まとめると

  • 視覚から得られる情報と三半規管が感じる体感がずれると、脳が混乱して乗り物酔いが起こる。
  • 三半規管が弱いと乗り物酔いをしやすい。
  • 目をつぶって歩いたり、回転いすに乗って回ったりすると三半規管が鍛えられる。
  • 子どもの場合は床運動や一輪車で三半規管を鍛えよう。

ということです。

乗り物酔いはつらいものなので、乗り物に乗るたびに酔ってしまう人は遠出も大変。乗り物酔いをしやすい人は、事前に酔い止めを飲むのはもちろんのこと、乗り物に乗ったらスマートフォンや本など細かい字を読むのをやめましょう。揺れる場所で細かい字を追うと、乗り物酔いをしやすくなります。

また、風を感じられるように窓を開けたり、電車が停車するたびに軽く動いたりすると乗り物酔いをしにくいです。さらに、清涼感のあるミントキャンディーをなめたりガムをかんだりすると、気分がすっきりして乗り物酔いをしにくくなるでしょう。

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

監修者

川村 繁樹
医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック 院長
医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医

耳鼻咽喉科専門医として10年間にわたり大学付属病院の部長を経験し、平成16年に川村耳鼻咽喉科クリニックを開業。親切で丁寧な診察・手術に定評があり、毎月300名以上の新患が来院。

  • 花粉症やアレルギー性鼻炎に対する凝固手術(局所麻酔下・日帰り):約1~2ヶ月
  • 鼻中隔弯曲症と中等以下副鼻腔炎に対する手術(局所麻酔下・日帰り):約10ヶ月
  • 鼻閉に対する鼻中隔弯曲症と下甲介の手術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症副鼻腔炎に対する手術(全身麻酔・一泊):約5ヶ月

の手術待ち状況となっている。

アレルギー性鼻炎に対する最も効果の高い手術として認識されている『超音波凝固装置による後鼻神経切断術』や、副鼻腔炎に対する新しい術式である『前方からのアプローチによる内視鏡下鼻内手術』を考案し、平成23年の日本鼻科学会『好酸球性副鼻腔炎の診断と評価作成基準の試み』では全国から選ばれた5人の内、唯一開業医として参加。現在も毎年250件以上の手術を行っており、継続的にその成績を学会や論文で報告している。

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論文・著書、シンポジウム・講演・海外発表の実績