上咽頭炎の症状

上咽頭炎の症状は? 知っておくべき治療法や予防法も紹介!

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
ドクターズ・ファイル取材記事
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「ずっとのどの調子が悪い」という症状に悩んでいる人は意外と多いと思います。そんなときは、上咽頭炎の可能性があるでしょう。のどの調子が悪いとき、まず疑うのが風邪です。しかし、風邪が治っても症状が改善されない、耳鼻科を受診しても「特に問題はない」と診断されてしまった、という経験はありませんか? 上咽頭炎は決して珍しい疾患ではなく、のどの不調を訴えている人の多くに見られるものです。のどだけでなく体のさまざまな部分に不調を引き起こす原因にもなるため、早めに対処することが必要でしょう。

この記事では、上咽頭炎の原因や症状、治療法や予防法までまとめてご紹介します。

  1. 上咽頭炎の基礎知識
  2. 上咽頭はどこにあるのか?
  3. 上咽頭炎と関連する病気
  4. 上咽頭炎をセルフチェックしよう
  5. 上咽頭炎の治療方法
  6. 上咽頭炎の予防方法
  7. 上咽頭炎に関するよくある質問

この記事を読むことで、上咽頭炎という疾患について詳しく分かるはずです。ぜひ参考にしてください。

1.上咽頭炎の基礎知識

まずは、上咽頭炎の症状や原因についてご紹介します。

1-1.上咽頭炎とは?

上咽頭炎とは、何らかの要因によって上咽頭に炎症が起こった状態をいいます。上咽頭は健康な人でも軽い炎症を起こしている場合もありますが、その炎症が強くなったときに症状として現れるようになるのです。上咽頭炎の認知度はまだ低く、耳鼻咽喉科医の中にも、この疾患について関心が低い医師が少なくありません。

1-2.主な症状

上咽頭炎の症状にはさまざまなものがありますが、代表的な症状は以下のとおりです。

  • のどの痛み
  • のどがイガイガしている
  • 痰(たん)がからみやすい
  • 声がかすれる
  • 耳がつまった感じがする

1-3.主な原因

原因として考えられるものには、ウイルス感染や空気の乾燥・ストレス・疲労・冷えなどがあります。また、逆流性食道炎やアレルギー性鼻炎・副鼻腔(ふくびくう)炎などが影響して上咽頭炎を起こすこともあるでしょう。

2.上咽頭はどこにあるのか?

上咽頭の働きや炎症を起こすメカニズムなどをまとめました。

2-1.上咽頭の場所と働き

上咽頭は気道の一部を構成しており、鼻の奥にあります。空気を鼻から吸うとまず上咽頭に入るため、細菌やウイルス・ほこりなどが付着しやすいのです。上咽頭の表面からは粘液が分泌され、侵入してきたウイルスやほこりを中咽頭に押し流す役割を果たしています。そして、痰(たん)として口から排出するのです。

2-2.炎症を起こすメカニズム

では、上咽頭に炎症が起こるメカニズムはどうなっているのでしょうか。健康な状態で起こる炎症のことを「生理的炎症」と呼びます。細菌やウイルス感染などがきっかけで炎症が強くなることを「病的炎症」といい、最初は急性上咽頭炎の症状としてのどの痛みや痰(たん)などの症状が現れるのが一般的です。こうした症状が慢性化すると、軽度から中程度の病的炎症が持続するようになります。

2-3.上咽頭炎の現状

のどの不調を訴えて受診しても「特に問題がない」といわれてしまうことが多いでしょう。上咽頭は医師の中でもあまり知られていない箇所であり、口を開けても見えない場所にあるため、炎症を見過ごされてしまうことが少なくありません。診断するためには内視鏡による検査が必要ですが、慢性上咽頭炎では内視鏡で見ても正常な状態に見えることもあるのです。そのため、耳鼻咽喉科を受診しても「異常なし」と診断されることがあります。

3.上咽頭炎と関連する病気

上咽頭炎は、一見無関係のような病気にも関係している場合があります。

3-1.全身の症状に関係している

上咽頭炎に関係する病気や症状には、さまざまなものがあります。たとえば、片頭痛もその一つです。ひどい片頭痛に悩まされ、脳神経外科を受診しても症状が改善されなかった場合の原因が、実は上咽頭炎だったという例もあります。また、上咽頭炎が逆流性食道炎と同様の症状を引き起こすこともあるのです。実際に、逆流性食道炎と診断されて薬を飲んだものの改善されず、上咽頭炎を治療したところ、症状が治まった例も数多く報告されています。

3-2.自律神経との関係

上咽頭炎が自律神経の調節障害を引き起こすこともあります。上咽頭が自律神経中枢の近くに位置することが原因と考えられるでしょう。自律神経の調節異常が起こると、めまいや吐き気・便通異常・だるさ・うつなどの症状を引き起こしてしまうのです。

3-3.併発する症状は?

上咽頭炎と併発しやすい症状には、ほかにも肩こりや首のこりなどがあります。上咽頭に比較的近い部位であるため、関連痛としてこのような痛みが発生するのです。また、病的炎症によって免疫細胞が活性化されると、上咽頭から遠く離れた部位にも炎症を起こします。歯痛や歯周囲炎などがよくある例です。

また、上咽頭に付着した粘液がのどの下の方に流れると、鼻がのどに流れる感じ、いわゆる後鼻漏として感じる場合もあります。したがって後鼻漏があっても副鼻腔炎ではなく、上咽頭炎の場合もあるのです。

4.上咽頭炎をセルフチェックしよう

自分が上咽頭炎を起こしているかどうか、セルフチェックしてみましょう。下記の項目で当てはまるものが多い場合は、その可能性が高くなります。

  • 朝起きるとのどが痛いことが多い
  • のどの奥に痰(たん)や鼻水が落ちてくる
  • のどのイガイガが続いている
  • 風邪でもないのに咳(せき)や痰(たん)が出る
  • 声がかすれてきた
  • 粘り気のある分泌物がのどに付着し、息が苦しくなることがある
  • 病院に行っても「異常なし」といわれる

5.上咽頭炎の治療方法

上咽頭炎の診断方法や治療方法などをご紹介します。

5-1.診断方法

上咽頭炎は、耳鼻咽喉科で内視鏡検査を受けることで診断が可能です。通常の内科ではこのような検査が行われないことが多いため、内科を受診して「異常なし」といわれた場合は耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。ただし、内視鏡で見ても診断できない場合は、上咽頭に塩化亜鉛などを塗り、出血や痛みがあるかどうかで診断されることになるでしょう。

5-2.セルフケアだけでは難しいのか?

上咽頭炎の症状を改善するために、セルフケアは非常に重要です。しかし、特に慢性上咽頭炎は症状がすすむと、セルフケアだけで症状を改善するのは難しくなります。病院での治療を受けると同時に、自宅でもしっかりとセルフケアをしていくことで、早めに症状の改善を目指すことができるでしょう。

5-3.病院での治療について

病院での主な治療法には、薬物療法やBスポット治療、EATがあります。それぞれの治療法について詳しくご紹介しましょう。

5-3-1.薬物療法

薬物療法では、消炎剤や粘液調整剤、抗生物質などの薬を使用します。頭痛や発熱などの症状がある場合は、鎮痛剤や解熱剤なども処方されることになるでしょう。

5-3-2.Bスポット療法

Bスポット療法は「EAT」とも呼ばれ、上咽頭に塩化亜鉛などの消炎剤を直接塗ることで炎症を抑える治療法です。急性上咽頭炎の場合は、1回の治療で症状が改善し、治療終了となる場合もあります。方法としては、塩化亜鉛溶液をしみ込ませた綿棒を鼻とのどから入れ、上咽頭の後壁に擦りつけるというものです。Bスポット療法の効果には個人差があります。一般的には何度か繰り返さないと効果は現れにくいのですが、当初は痛みと軽度の出血を伴う場合もあります。

5-4.病院を受診すべき症状は?

病院を受診すべきなのは、以下のような場合です。

  • のどや鼻の不調が長期間続いている
  • 症状の出方が強く、生活に支障をきたしている
  • のどや鼻以外にも症状が出ている
  • 市販の薬では症状が改善しない
  • • 原因不明の後鼻漏が続いている

5-5.病院選びのポイント

上咽頭炎で受診する際の病院は、以下のポイントを参考にして選んでください。

  • 上咽頭炎の治療を得意としているか
  • 通いやすい場所にあるか
  • 質問に対して丁寧に答えてくれるか
  • 医師との相性はよいか
  • 治療費についての説明をきちんとしているか
  • 清潔な院内であるか
  • 受付やスタッフの対応が丁寧でスピーディーか

5-6.注意点

Bスポット療法は従来からある上咽頭炎の治療法といえますが、この治療が効果を示しにくいケースもあるということを覚えておいてください。たとえば、上咽頭の腫れが強い場合やほかに呼吸器疾患を持っている場合、定期的な受診が難しい場合などは、Bスポット療法による症状改善は難しいこともあります。また、生活習慣に問題がある場合なども効果が得られない可能性があるため、注意が必要です。

6.上咽頭炎の予防方法

上咽頭炎を予防する方法やポイントをご紹介しましょう。

6-1.予防はできるのか?

上咽頭炎は普段の環境や生活習慣に気をつけることで予防できます。最も重要なのは、免疫力を高めることです。良質な睡眠をしっかりとり、ストレスや疲労をためないこと、栄養バランスのよい食事を心がけることで、人間の免疫力はアップします。ウイルスや細菌に負けない体を作ることで、上咽頭炎にかかるリスクを減らすことができるでしょう。体の冷えは自律神経のバランスを崩し、免疫力の低下につながるため注意してください。

6-2.乾燥は大敵!

のどや鼻の粘膜を守る上で、乾燥は大敵です。普段から部屋の湿度に注意し、乾燥した環境を作らないようにしましょう。外出する際はマスクを着用し、乾いた空気を吸いこまないように気をつけてください。特に、鼻がつまっていると口呼吸になりがちです。乾燥した空気が上咽頭に流れ込むと上咽頭炎を起こしやすくなるため、できるだけ湿度を高くして鼻のとおりをよくし、鼻呼吸を心がけるようにしましょう。

6-3.やってはいけないこと

できるだけのどの粘膜を刺激しないように、大声を出したり刺激物を食べたりするのは控えるようにしましょう。特に、アルコールの過剰摂取や喫煙は咽頭を刺激する原因になります。症状が出ているときは避けるようにし、粘膜を休ませてあげてください。

6-4.鼻うがいがおすすめ!

上咽頭炎の予防や症状軽減に、鼻うがいが効果的です。鼻の中の異物を洗い流すことができるため、鼻のとおりが良くなりすっきりします。やり方は、ぬるめの生理食塩水を鼻から注入し、反対の鼻や口から出すだけです。やり方を間違えると逆効果になったり痛みを感じたりすることもあるため、耳鼻咽喉科で相談してから実践してみるとよいでしょう。

7.上咽頭炎に関するよくある質問

「上咽頭炎について知りたい」という人が感じる疑問とその回答をまとめました。

Q.上咽頭炎は人にうつりますか?
A.急性上咽頭炎はウイルスや細菌が原因で起こることが多いため、風邪と同じように咳(せき)などで人に感染する可能性があるでしょう。慢性上咽頭炎の場合は、人に感染しません。

Q.上咽頭炎で熱が出ることもあるのですか?
A.ウイルスや細菌感染が原因の急性上咽頭炎の場合は、発熱することもあります。慢性上咽頭炎では発熱するケースはあまりないでしょう。

Q.Bスポット療法は痛みがあるのですか?
A.上咽頭の炎症が強い場合はある程度の痛みを伴います。繰り返し治療を行い、炎症が治まってくれば、痛みもなくなってくるでしょう。

Q.上咽頭炎になってしまったときは、どのような食事が望ましいですか?
A.ビタミンAやビタミンBには粘膜を健康に保つ作用があるため、レバーやにんじん・牛乳やヨーグルト・納豆などを積極的に取り入れるとよいでしょう。のどに刺激を与えないように、固いものや辛いものなどはできるだけ控えるようにしてください。

Q.睡眠中に口呼吸になってしまうようなのですが、どうすればよいでしょうか?
A.睡眠時に口に貼るテープが市販されているため、使ってみることをおすすめします。もちろん、寝室の加湿もしっかり行ってください。

まとめ

いかがでしたか? 上咽頭炎の原因や症状・治療法などを詳しくご紹介しました。「上咽頭炎という病名を聞いたことがない」という人も多いと思います。しかし、上咽頭炎は珍しい疾患ではなく、診断されたことがなくても多くの人が経験したことがあるものです。ぜひこの記事を参考にして、上咽頭炎について知ってください。

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

監修者

川村 繁樹
医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック 院長
医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医

耳鼻咽喉科専門医として10年間にわたり大学付属病院の部長を経験し、平成16年に川村耳鼻咽喉科クリニックを開業。親切で丁寧な診察・手術に定評があり、毎月300名以上の新患が来院。

  • 花粉症やアレルギー性鼻炎に対する凝固手術(局所麻酔下・日帰り):約1~2ヶ月
  • 鼻中隔弯曲症と中等以下副鼻腔炎に対する手術(局所麻酔下・日帰り):約10ヶ月
  • 鼻閉に対する鼻中隔弯曲症と下甲介の手術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症副鼻腔炎に対する手術(全身麻酔・一泊):約5ヶ月

の手術待ち状況となっている。

アレルギー性鼻炎に対する最も効果の高い手術として認識されている『超音波凝固装置による後鼻神経切断術』や、副鼻腔炎に対する新しい術式である『前方からのアプローチによる内視鏡下鼻内手術』を考案し、平成23年の日本鼻科学会『好酸球性副鼻腔炎の診断と評価作成基準の試み』では全国から選ばれた5人の内、唯一開業医として参加。現在も毎年250件以上の手術を行っており、継続的にその成績を学会や論文で報告している。

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論文・著書、シンポジウム・講演・海外発表の実績