アデノイド増殖症

アデノイド増殖症とは? 放っておくと危険な理由と耳鼻科での治療法

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
ドクターズ・ファイル取材記事
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アデノイド増殖症という病気をご存じでしょうか? アデノイドとは、鼻の奥に存在している扁桃(へんとう)の一種です。通常、幼小児期に働きが活発になるアデノイドが、極端に肥大したり炎症を起こしたりすることを、アデノイド増殖症と言います。この病気の特徴は、症状がさまざまで個人差があることです。そのため、病気に気付かずに何年も不快な思いをしている人もたくさんいます。子どもに多いと言われているこの病気は、一体何が原因で起こるのでしょうか。そして、治療法にはどのようなものがあるのか、知っておいてください。

この記事では、アデノイド増殖症という病気について、その原因や治療法などをまとめて紹介します。

  1. アデノイド増殖症とは?
  2. アデノイド増殖症の症状は?
  3. アデノイド増殖症の原因
  4. アデノイド増殖症をセルフチェック
  5. アデノイド増殖症の治療法
  6. アデノイド増殖症に関するよくある質問

この記事を読むことで、アデノイド増殖症を治すための方法が分かります。早めに治療を検討して、不快な症状を取り除きましょう。

1.アデノイド増殖症とは?

まずは、主な症状や放置するとどうなるのかなどをまとめてみました。

1-1.どんな病気なのか?

アデノイドとは、鼻の奥に存在している扁桃(へんとう)の一種です。通常、口を開けた時に見える扁桃は口蓋扁桃と呼び、アデノイドはのどちんこ(口蓋垂)の裏でその上方に存在し、正確には咽頭扁桃と呼びます。乳幼児期から学童期にかけて免疫に関係する重要な機能になります。思春期になるとほぼ消失するはずのアデノイドが、病的に肥大したり炎症を起こしたりする病気です。そのため、この病気は主に子どもがなりやすく、症状がひどいようであれば手術によってアデノイドを摘出することも検討されます。

1-2.喉のメカニズムを知っておこう!

病気のことを知る上で、まずは喉のメカニズムについて理解しておきましょう。喉には「扁桃(へんとう)」と呼ばれるリンパ組織の集合体が存在しています。この集合体は、外部から細菌やウイルスが体内に侵入するのを防ぐ役割を果たしており、その代表的なものが「アデノイド」です。通常、3歳ごろから増大し始め、6歳ごろにピークを迎えた後は次第に萎縮していきます。大人になると表面から見てもほとんど分からないくらいの大きさになり、その存在意味も特になくなるのです。

1-3.アデノイド顔貌との関係について

口呼吸の状態が長期間続くことで、顔の筋肉が衰え骨格がゆがんでしまった結果、アデノイド顔貌(がんぼう)になってしまうことがあります。つまり、アデノイドが肥大している人に起こる、特有の顔つきのことなのです。特徴としては、以下のようなものがあります。

  • 顎が小さい
  • 顔が長い
  • 歯並びが悪い
  • 顔つきがたるんでいる
  • 唇がめくれたようになる
  • 鼻が低い

1-4.放っておくとどうなるのか?

アデノイド増殖症を放っておくと、難聴や副鼻腔(ふくびくう)炎の原因になります。子どもの場合は「聞こえにくさ」に気付かないことも多いため、放置しておくと学校生活にも支障が現れるようになるでしょう。難聴と睡眠障害が重なり、日中の集中力低下なども起こりやすくなります。また、顔つきや歯並びにも影響してくるため、身体の成長が妨げられてしまうのです。

2.アデノイド増殖症の症状は?

アデノイド増殖症では、さまざまな症状が確認されています。主に、鼻や耳・全身に症状が出ることが多いため、それぞれ詳しくまとめておきましょう。

2-1.鼻に起こる症状

アデノイドが肥大することで鼻腔(びくう)と咽頭の間がふさがり、鼻詰まりが起こりやすくなります。副鼻腔(ふくびくう)炎の原因にもなるでしょう。鼻呼吸がしにくくなるため口呼吸になり、普段から口を開けた状態になってしまうこともあります。

2-2.耳に起こる症状

中耳と咽頭はつながっているため、アデノイドが肥大することで滲出(しんしゅつ)性中耳炎を引き起こしやすくなります。中耳に滲出(しんしゅつ)液がたまることで起こる中耳炎です。放置しておくと難聴になることもあるため、早めに治療する必要があるでしょう。滲出(しんしゅつ)性中耳炎は痛みや発熱を伴うことが少ないため、小さな子どもだと気付かないことも多くなっています。

2-3.全身に起こる症状

鼻腔(びくう)と咽頭の間がふさがると、睡眠時のいびきが大きくなります。睡眠の質が低下することから日中の眠気や睡眠時無呼吸症候群など、睡眠障害の原因になるでしょう。特に学童期においては、日中の注意力散漫、行動に落ち着きがないなどの症状も現れる場合が多くなっています。

3.アデノイド増殖症の原因

アデノイド増殖症の原因について考えてみました。

3-1.原因は解明されていない?

原因については、まだはっきりと解明されていません。生まれつきの体質や遺伝・アレルギーが関係しているという説もありますが、何が原因でそのような状態になるのか分かっていないのです。そのため、どうすれば予防できるのかも分かりません。ただ、アデノイドは炎症を繰り返すことでより肥大する傾向にあるため、病気に気付いたら早めに治療を開始することが必要です。

3-2.なりやすい人は?

アデノイド増殖症は発病の原因が分かっていないため「なりやすい人とそうでない人がいる」というものではありません。ただし、以下のような人は特に注意が必要です。

  • アデノイド増殖症の人が家族にいる
  • 「アデノイドが普通より大きい」と病院で言われたことがある
  • アレルギー体質である
  • 扁桃(へんとう)炎を伴う発熱の頻度が多い

4.アデノイド増殖症のセルフチェック

アデノイド増殖症であれば、早めに治療が必要です。まずは、セルフチェックしてみましょう。

4-1.セルフチェック項目

以下の項目でいくつ当てはまるものがあるかチェックしてみてください。

  • いつも口呼吸をしている
  • 「聞こえが悪い」と思うことがある
  • 睡眠時のいびきが大きい
  • 常に鼻が詰まっている
  • 副鼻腔(ふくびくう)炎を繰り返し発症する
  • 扁桃(へんとう)炎を起こしやすい
  • 睡眠障害による集中力、注意力の低下が見られる

当てはまる項目が多いほど、アデノイド増殖症である可能性が高いと言えるでしょう。病院を受診することをおすすめします。

4-2.注意点

アデノイド増殖症は症状が多様です。鼻や耳、全身症状として現れることが多いため、原因が何であるか気付かない人も多くなっています。特に心配なのは、子どもの睡眠時無呼吸症候群です。心身の成長や発達に大きな影響を与えることになるため、早期に改善する必要があります。子どもの成長にとって睡眠がいかに大切なものであるかを理解し、早めに受診するべきです。

5.アデノイド増殖症の治療法

では、アデノイド増殖症の治療法について解説します。

5-1.気付いたら耳鼻科を受診しよう!

アデノイドは年齢とともに萎縮するため、症状が軽度の場合はそのままにしておいても改善されることもあるでしょう。しかし、深刻な症状が出ている場合は、耳鼻咽喉科での適切な治療が必要になります。できるだけ早期に治療することが、お子さまの健やかな成長に必要です。自己判断だけでなく、専門家に相談して対処法を決めていくことをおすすめします。

5-2.検査方法

病院では、問診とともに顔の側面からX線撮影を行い、アデノイド増殖の程度を確認することになるでしょう。また、鼻からファイバースコープを入れて検査する方法もあります。必要であればCTやMRI検査を行う場合もありますが、X線撮影かファイバースコープによる検査で診断されるのが一般的です。

5-3.治療法について

アデノイド増殖症の治療には、保存的治療と外科的治療があります。急性の炎症により一時的にアデノイドが肥大している場合は、抗生剤や消炎剤の投与によって様子を見ることがほとんどです。この方法で症状が改善されない場合は、アデノイドおよび口蓋扁桃摘出手術が行われます。

5-4.手術について

薬の投与によって症状の軽減が見られない場合や、アデノイド肥大による諸症状が強く出ている場合は、切除手術が必要になります。手術については全身麻酔下で行われ、術後2〜5日の入院が必要です。手術後は約1か月で傷跡が正常な粘膜に覆われ、治癒となります。

5-5.病院の選び方と注意点

アデノイド増殖症が疑われる場合の病院選びは、以下を参考にしてください。

  • アデノイド増殖症治療の実績が豊富である
  • 自宅から通いやすい
  • 治療に関する説明を丁寧にしてくれる
  • 医師との相性がよい

また、アデノイド増殖症については、子どもの年齢も考慮して治療方針を決めていくことが大切になります。前述したとおり、アデノイドは成長とともに萎縮していくものです。現在の症状によっては手術を選択せず、保存的治療をすすめていくことを選択するべき場合もあるでしょう。親身になって相談に乗ってくれる医師がいる病院であるか、しっかりと見極めることも大切です。

6.アデノイド増殖症に関するよくある質問

「アデノイド増殖症について知りたい」という人が感じる疑問とその回答をまとめてみました。

Q.アデノイドと扁桃(へんとう)腺はどう違うのですか?
A.扁桃(へんとう)腺とは「口蓋扁桃(へんとう)」のことで、喉の左右にあります。アデノイドは「咽頭扁桃(へんとう)」とも呼ばれ、鼻腔(びくう)と咽頭のつなぎ目に位置しているのです。いずれも細菌やウイルスの侵入を防ぎ、抗体を作る役割を持っています。

Q.子どもが副鼻腔(ふくびくう)炎を繰り返し発症します。アデノイド増殖症でしょうか?
A.その可能性は十分にあります。アデノイドが慢性的な炎症を起こすと副鼻腔(ふくびくう)炎を発症する原因になるのです。早めに耳鼻科を受診してください。

Q.アデノイドを切除すると免疫機能が低下するというのは本当ですか?
A.以前はそのような考え方もありました。しかし、現在はアデノイドの摘出により免疫機能の低下は認められないという考えが主流です。

Q.アデノイド顔貌(がんぼう)を大人になってから治すことはできますか?
A.歯並びや骨格ができあがってからアデノイド顔貌(がんぼう)を治すためには、歯列矯正治療や外科的な手術が必要になります。ただし、鼻呼吸を意識して口を閉じるよう努力することで、口周りの筋肉が鍛えられて顔のたるみが減っていく可能性はあるでしょう。

Q.アデノイド増殖症のほかに、鼻詰まりが起こる病気はありますか?
A.ハウスダストアレルギーや花粉症、鼻中隔湾曲症、急性鼻炎、副鼻腔(ふくびくう)炎、などが考えられます。ほかにどのような症状があるかしっかり観察しておきましょう。

まとめ

いかがでしたか? アデノイド増殖症について詳しく解説しました。アデノイド増殖症は、鼻や耳、全身にさまざまな症状を及ぼす病気です。放っておくと顔つきがゆがんでしまうこともあるため、必要に応じて適切な治療が必要になります。特に子どもに多い病気であるため、親御さんがしっかりと観察してあげましょう。気になる症状がある場合は、すぐに耳鼻科で相談してください。

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

監修者

川村 繁樹
医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック 院長
医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医

耳鼻咽喉科専門医として10年間にわたり大学付属病院の部長を経験し、平成16年に川村耳鼻咽喉科クリニックを開業。親切で丁寧な診察・手術に定評があり、毎月300名以上の新患が来院。

  • 花粉症やアレルギー性鼻炎に対する凝固手術(局所麻酔下・日帰り):約1~2ヶ月
  • 鼻中隔弯曲症と中等以下副鼻腔炎に対する手術(局所麻酔下・日帰り):約10ヶ月
  • 鼻閉に対する鼻中隔弯曲症と下甲介の手術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症副鼻腔炎に対する手術(全身麻酔・一泊):約5ヶ月

の手術待ち状況となっている。

アレルギー性鼻炎に対する最も効果の高い手術として認識されている『超音波凝固装置による後鼻神経切断術』や、副鼻腔炎に対する新しい術式である『前方からのアプローチによる内視鏡下鼻内手術』を考案し、平成23年の日本鼻科学会『好酸球性副鼻腔炎の診断と評価作成基準の試み』では全国から選ばれた5人の内、唯一開業医として参加。現在も毎年250件以上の手術を行っており、継続的にその成績を学会や論文で報告している。

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