内視鏡下副鼻腔手術 (ESS) の短期入院手術成績
これは平成14年〜15年に私が岩野耳鼻咽喉科サージセンターで行った副鼻腔炎に対する短期入院手術の成績です。副鼻腔炎は症状が安定するまで術後数ヶ月を要するため、術後1年以上経過し、CTにて術前後に評価し得た30例を対象としました。一般的に手術成績の評価方法としては患者さんの自覚症状がどの程度良くなったかをアンケートで評価し(図1・表1)、客観的にはCTなどで各副鼻腔の改善度を検討します(図2・表2)。
A: 自覚症状の変化(図1・表1)
自覚症状の変化では症状がなくなったものを「消失」、すごく良くなったものを「著明」として両者を合わせたものを有効率としました。(まあまあ良くなったものを「改善」として3者を合わせた改善率で評価する方法もありますが厳しめの基準を採用しました。改善率、有効率の結果は表1を参照して下さい。)結果を症状別に見ると鼻閉(鼻づまり)が90%、頭痛が97%、嗅覚障害が81%と良好な成績でした。一方、鼻汁や後鼻漏はそれぞれ66%、76%とやや低めの有効率でした。その原因としては30例中の7例が喘息(アスピリン喘息含む)合併例、9例がアレルギー性鼻炎合併例であり5割以上に好酸球性炎症の関与が存在したことが一因と考えられます。
「特殊な副鼻腔炎」で説明したように好酸球性副鼻腔炎は難治性、易再発性です。岩野耳鼻咽喉科サージセンターは短期入院手術の専門病院として有名であり、難治性の方が集まる傾向があります。それでも術後1年で66〜76%の有効率は決して悪い成績ではないと思います。この図で注目していただきたいのは生活支障度です。近年よくQOL(quality of life)と表現されますが患者さんの苦痛度が端的に反映される項目であり、これが90%と高率であったことは1〜2泊の短期入院手術でも十分に根治性の高い手術が行えることを示しています。以前に1週間の入院で行っていた頃の成績と比較しても遜色のない結果でした。
B:他覚所見の変化(図2・表2)
手術成績を客観的に評価するにはCT上の粘膜病変の変化を手術の前後で比較します。すなわち、手術前の各副鼻腔の病変を正常の「0」から高度病変の「3」まで4段階に分類し、術後に病変が消失したものを「消失」、2段階良くなったものを「著明」として両者を合わせたものを有効率としました。
(1段階良くなったものを「改善」として3者を合わせた改善率で評価する方法もありますが厳しめの基準を採用しました。改善率、有効率の結果は表2を参照して下さい。)
結果を副鼻腔別に見ると前篩骨洞、後篩骨洞、蝶形骨洞はいずれも90%を超える良好な有効率でした。一方上顎洞は83%であり、しばしば洞底部に嚢胞状の粘膜腫脹を認めることがあります(図3)。ESS(内視鏡下副鼻腔手術)では洞底部の粘膜は保存するためによく認められる所見ですが、粘液分泌がなく増大傾向がなければ治療の必要性がないとも言われています。症状がある場合には外来で鼻内から粘膜の除去手術を行います。前頭洞の有効率は69%と副鼻腔別では最も低い数値でした。前頭洞と鼻腔との交通路は両側を頭蓋内と眼窩に挟まれており通常の手術では数mmの広さしか拡大することができないために術後の再狭窄が起こりやすく、前頭洞は最も難治性の高い副鼻腔です(図3)。
再閉鎖した場合には先ほどの上顎洞と同様に外来手術で開放しますが、困難な場合には前頭洞の拡大手術であるDraf2型・3型手術を短期入院にて行います。他覚所見全体としても以前に1週間の入院で行っていた頃の成績と比較してむしろ良い成績でした。
患者さんの満足度
手術を受けられた患者さんにはアンケートの最後に満足度を答えていただいています。これは、単に手術の効果のみではなく、手術前後の治療、医師の説明、看護などを総括したものですが、今回ご協力いただいた30名の平均は96%でした。

