医院名:川村耳鼻咽喉科クリニック 
住所:〒536-0001 大阪市城東区古市3丁目23-21 
電話番号:06-6939-8700

副鼻腔炎(蓄膿症)の治療・手術内容

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副鼻腔炎(蓄膿症とは)

副鼻腔炎

副鼻腔炎は、鼻や目の周りにある副鼻腔と呼ばれる空洞内が炎症を起こす病気です。鼻風邪から移行することが多く、年齢や性別に関係なく発症します。

発症してから1か月未満のものを急性副鼻腔炎、急性副鼻腔炎が治らずに慢性化したものを慢性副鼻腔炎といいます。慢性副鼻腔炎になると膿のような黄色くドロっとした鼻汁が出ることから、かつては蓄膿症とも呼ばれていました。

鼻の構造

我々が一般的に意識している鼻は正式には固有鼻腔と言います。固有鼻腔には左右の鼻腔を隔てている鼻中隔があり、左右それぞれの固有鼻腔には下手前から順番に下(鼻)甲介、中(鼻)甲介、上(鼻)甲介と呼ばれる棚状の突起物が存在します。これらの表面は粘膜で覆われていて、加温、加湿、病原菌や異物の排泄を行う役割があるとされています。

固有鼻腔の周囲に副鼻腔と呼ばれる空洞があり、頬の裏側にある上顎洞、前額部の裏にある前頭洞、両目の間にある篩骨洞、最も奥にある蝶形骨洞に分けられます。それぞれの副鼻腔は固有鼻腔と自然孔と呼ばれる小さな穴で交通しています。

副鼻腔炎(蓄膿症)の症状

鼻汁・後鼻漏

副鼻腔炎の最も一般的な症状は鼻汁です。ただ、鼻汁もアレルギー性鼻炎の場合は透明でさらさらとした鼻汁ですが、副鼻腔炎の場合は『青ばな』と呼ばれる膿性の鼻汁、あるいは透明感のない濁った鼻汁であることが一般的です。感染の強い急性期や慢性でも急性増悪期ほど膿性の鼻汁になります。

副鼻腔炎の中でも好酸球性副鼻腔炎はニカワ状と表現される極めて粘稠度の高い黄色い鼻汁が特徴的とされています。またアレルギー性鼻炎の鼻汁が主に前方に垂れるのに対して、鼻の構造上、副鼻腔炎の鼻汁は後方、すなわち、のどの方向へ流れやすく、後鼻漏と呼ばれます。

ただし、後鼻漏を訴える方の中には副鼻腔炎がないのに鼻がのどへ流れる感じを自覚する場合もあります。その場合は上咽頭の炎症が原因のこともありますが、原因が見つからないことも少なくありません。CT撮影なら軽度でも副鼻腔炎の有無は診断できます。

鼻閉・鼻づまり

副鼻腔や固有鼻腔の粘膜が腫れると鼻づまりが起こります。更にひどくなると副鼻腔内の腫れた粘膜がポリープ状になりところてん様に固有鼻腔に押し出されて空間を閉塞します。また粘稠度の高い鼻汁によっても鼻づまりが起こります。更にアレルギー性鼻炎を合併すると下鼻甲介が腫れて鼻づまりが起こります。また鼻中隔弯曲症や中甲介蜂巣などの骨構造に問題がある場合も鼻閉の原因となります。詳しくは鼻中隔弯曲症のページもご参照ください。

痛み・鈍重感

急性副鼻腔炎、あるいは慢性副鼻腔炎でも急性増悪期には疼痛を感じる事も少なくありません。痛みの部位としては頬部、前額部、両目の間などが好発部位です。上顎洞の炎症の場合は歯の痛みとして自覚し、歯科受診される方も少なくありません。虫歯がなくても副鼻腔炎によって歯痛が出現する事はよくあります。ただし、虫歯が原因となって副鼻腔炎を起こす場合もありますので、その場合は耳鼻科と歯科が協力して治療する事が必要です。

近年は優れた薬剤が増えたので、ほとんどありませんが、強い疼痛を伴う副鼻腔炎を放置すると頭蓋内合併症や視力障害をきたす可能性もあります。

嗅覚障害

副鼻腔炎に嗅覚障害を伴うことは少なくありません。多くの場合は臭いの道(嗅裂)の粘膜が腫れることが原因ですが、臭いを感じる神経(嗅神経)の周囲の炎症を長期間持続すると嗅神経自体が弱り、治療しても嗅覚が回復しない場合もあります。特に好酸球性副鼻腔炎では早期から嗅覚障害を伴うことが特徴的と言われています。嗅覚障害が高度な場合は嗅神経の機能を調べる方法として静脈性嗅覚検査を行います。この検査が正常であれば嗅覚が改善する可能性は比較的高いと言われています。また、鼻中隔弯曲症や中甲介蜂巣などの骨構造に問題がある場合も嗅覚障害が起こることがあります。

副鼻腔炎(蓄膿症)の原因

「副鼻腔炎の原因としては、細菌やウィルス、あるいは真菌(カビ)などによる鼻腔の炎症がきっかけとなります。鼻腔(正式には固有鼻腔)は自然孔と呼ばれる小さな穴を介して副鼻腔と交通しており、鼻腔の炎症が副鼻腔に及んで副鼻腔炎になります。自然孔は炎症によって容易に閉塞し、炎症の逃げ場がなくなるために慢性化して慢性副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症になると考えられています。早期であれば抗生剤の治療や局所の処置により改善が見込まれますが、炎症が高度になると、閉塞した部位を開放したり、炎症を起こした粘膜を清掃するなどの手術的治療が必要となります。

また近年注目されているのが細菌感染ではなく、自身の鼻汁中に含まれる白血球の一部である好酸球による炎症が原因となる副鼻腔炎で好酸球性副鼻腔炎と呼ばれています。この疾患は従来有効とされていた抗生剤が効きにくく、難治性であることが指摘されています。詳しくは「特殊な副鼻腔炎:好酸球性副鼻腔炎」の項をご参照下さい。

副鼻腔炎(蓄膿症)の診断方法

副鼻腔炎の診断には視診や内視鏡(ファイバースコープ)の検査、およびレントゲンやCTなどの画像検査が中心となります。

ファイバースコープでは粘膜腫脹や骨の形態、ポリープの大きさ、鼻汁の部位、量などを詳細に観察可能です。当院ではその結果を動画として患者さんご本人にお見せしながら説明いたします。ただし副鼻腔炎に中には鼻腔内に異常所見が現れない場合もあり、多くの場合は画像による診断が必要となります。

副鼻腔炎の有無を調べるだけであればレントゲンでも可能ですが、前頭洞や蝶形骨洞などレントゲンで写りにくい部位の診断や骨の構造、粘膜腫脹の程度などを調べるにはCTがきわめて有効です。当院では0.2mm刻みの細かいスライスで詳細な診断が可能な3次元CTを備えており、初診当日に診断、説明が可能です。現在設置しているCTは従来型のものと比較して約10~20分の1の低被爆量の装置であり、安心して検査を受けていただくことが可能です。
また、金属物の影響を受けませんので歯が原因の副鼻腔炎などの診断も容易です。

CT見本1 右歯性副鼻腔炎(赤丸が原因歯)

副鼻腔炎(蓄膿症)の治療方法

1. 保存的治療

急性副鼻腔炎の場合

急性副鼻腔炎の場合

急性の場合は細菌感染が契機になっている場合が多いので、抗菌力が期待できる抗生物質や炎症を抑えるお薬、場合によってはステロイドなどを使用します。また、局所療法として鼻腔の吸引、洗浄、更には、抗生物質などの薬を細かい粒子にして副鼻腔まで届きやすくなるように蒸気を鼻から吸うネブライザー療法があります。その他、上顎洞の急性炎症の場合には内部の膿を穿刺吸引する方法もあります。

慢性副鼻腔炎の場合

慢性期の場合にはある種のマクロライド系抗生物質を少量、数ヶ月間投与する治療法が有効であることが、一般的に認められており、現在これが保存的治療としては標準治療とされています。少量にする事により抗菌力よりサイトカインなどを介して粘膜の機能を正常化するのが効果機序と言われています。少量ですので細菌が耐性化する可能性も低く、肝機能への悪影響も少ないとされています。この治療を数ヶ月行い、効果がなければ手術療法を検討する必要があります。

2.手術的治療

前述の保存的治療で改善しない場合や反復する場合には手術療法の適応となります。副鼻腔炎に対する手術的治療については、手術のページをご覧ください。
当院は、大阪府大阪市はもとより、京都・奈良・兵庫・滋賀・和歌山など、近隣の県より急性副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎の治療を希望される方も多くいらっしゃいます。相談は無料で受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

副鼻腔炎の手術の説明

従来の手術療法

保存的治療で改善しない場合や反復する場合には手術療法の適応となります。20年ほど前までの副鼻腔手術の考え方は、副鼻腔の粘膜を残さず摘出するのが良いとされており、結果的に骨の表面が広く露出し、傷つき、副鼻腔の生理的状態が損なわれたり、術後に粘液が貯まる嚢胞が再発することも少なくありませんでした。

近年の手術療法

近年の研究により副鼻腔炎の原因として固有鼻腔(いわゆる鼻の中)の炎症や形態に問題がある事が分かってきました。従って、固有鼻腔の病変が改善し、固有鼻腔と副鼻腔との間の換気と排泄機能が改善すればある程度粘膜を温存する方がより生理的状態に近い形で治ることが判明しました。すなわち、固有鼻腔と副鼻腔の交通を十分につけ、病的な粘膜のみを摘出すれば正常粘膜を温存する方が良いというのが現在の考え方です。そのために以前のように唇の裏で歯茎を切って骨の一部を摘出するのではではなく、固有鼻腔から全ての手術操作を行う方がより安全で合目的であると考えられています。ただ、そのためには肉眼で行うのは困難で危険性が高く、様々な角度の内視鏡を用いることにより、従来見えなかった部分も手術操作が可能となり、顔や唇に傷をつけることなく手術が行えるようになりました。また、マイクロ・デブリッダーと呼ばれる内視鏡用に粘膜を摘出する手術器具も開発されました。このような手術概念や医療機器の進歩に伴い普及してきたのがESSと呼ばれる内視鏡下副鼻腔手術です。

内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の利点と当院での手術療法

従来の手術と比較して内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の大きな利点の一つに体に対するダメージが(手術侵襲)が少ない事が挙げられます。したがって、術後の出血や顔の腫れが少なく、従来法に多く見られた頬部のしびれ感はほぼありません。従って以前の手術ではが両側の副鼻腔手術で2〜3週間の入院が必要であったのに対し、ESSはほとんどの施設で1週間程度の入院で行われています。ただし、内視鏡を用いるから、あるいは手術侵襲が小さいからといってESSが簡単な手術であるというわけではありません。むしろカメラの映像をモニターに投影して行う手術であるために従来の方法以上に解剖の知識と高度なテクニックや経験が要求される術式とも言えます。当院では病変の程度に応じて日帰り手術で行っております。全身麻酔や他の手術も必要な方は提携する「おくだクリニック」にて当院医師が執刀し1泊2日の短期入院手術を行います。

鼻中隔は左右の固有鼻腔の境となる板状の骨です。また左右それぞれの固有鼻腔には下鼻甲介や中鼻甲介、上鼻甲介と呼ばれる棚状の構造物があります。これらの構造物は内部が軟骨や骨でありその周囲は粘膜でおおわれています。鼻中隔が高度に弯曲したり、発育時に中鼻甲介の内部に空洞が形成される中甲介蜂巣が存在すると固有鼻腔の形態が悪くなり鼻づまりや副鼻腔炎の原因となります。同様にアレルギー性鼻炎や点鼻薬の頻用で下甲介粘膜が腫れている場合や、下鼻甲介骨の形が悪い場合も鼻づまりの原因や副鼻腔炎の増悪因子となり得ます。このような時には固有鼻腔の形態を内視鏡下に改善する手術の適応となります。この手術単独であれば当院ではほぼ日帰り局所麻酔下に行います。重症の副鼻腔炎を合併している場合には一泊での全身痲酔下に行います。

詳しくは「鼻中隔矯正術・粘膜下下甲介骨切除術」をご覧ください。

ESSの種類(慢性副鼻腔炎の手術)

副鼻腔自然口開窓術

ESSのI型とよばれる手術法で、局所麻酔をした後に鼻茸(鼻ポリープ)を内視鏡を使って切除して、鼻の通りを確保する治療法です。手術に要する時間はおよそ10分と短時間で終了します。

副鼻腔単洞手術

ESSのⅡ型とよばれる手術法で、局所麻酔をした後に副鼻腔の1つを内視鏡で解放させて炎症がある粘膜部分を除去する治療法です。炎症の範囲や状態などによって手術時間は異なります。

選択的(複数洞)副鼻腔手術

ESSのⅢ型とよばれる手術法で、局所麻酔をした後に副鼻腔の2つ以上を内視鏡で解放させて、炎症がある部分の粘膜を除去する治療法です。炎症の範囲や状態などによって手術時間は異なります。

汎副鼻腔手術

ESSのⅣ型とよばれる手術法で、局所麻酔をした後に副鼻腔のすべてを内視鏡で解放させて、炎症がある部分の粘膜を除去する治療法です。手術に要する時間は、片側60分程度、両側120分程度となります。

手術成績について

院長が行った副鼻腔炎の手術に対する手術成績についてご紹介します。こちらのデータは術後1年以上経過し、CTにて術前後に評価し得た30例を対象としております。

A: 自覚症状の変化(図1・表1)

自覚症状の変化では症状がなくなったものを「消失」、すごく良くなったものを「著明」として両者を合わせたものを有効率としました。(まあまあ良くなったものを「改善」として3者を合わせた改善率で評価する方法もありますが厳しめの基準を採用しました。改善率、有効率の結果は表1を参照してください。)結果を症状別に見ると鼻閉(鼻づまり)が90%、頭痛が97%、嗅覚障害が81%と良好な成績でした。一方、鼻汁や後鼻漏はそれぞれ66%、76%とやや低めの有効率でした。その原因としては30例中の7例が喘息(アスピリン喘息含む)合併例、9例がアレルギー性鼻炎合併例であり5割以上に好酸球性炎症の関与が存在したことが一因と考えられます。

「特殊な副鼻腔炎」で説明したように好酸球性副鼻腔炎は難治性、易再発性ですが、それでも術後1年で66〜76%の有効率は決して悪い成績ではないと思います。この図で注目していただきたいのは生活支障度です。近年よくQOL(quality of life)と表現されますが患者さんの苦痛度が端的に反映される項目であり、これが90%と高率であったことは1〜2泊の短期入院手術でも十分に根治性の高い手術が行えることを示しています。以前に1週間の入院で行っていた頃の成績と比較しても遜色のない結果でした。

B:他覚所見の変化(図2・表2)

手術成績を客観的に評価するにはCT上の粘膜病変の変化を手術の前後で比較します。すなわち、手術前の各副鼻腔の病変を正常の「0」から高度病変の「3」まで4段階に分類し、術後に病変が消失したものを「消失」、2段階良くなったものを「著明」として両者を合わせたものを有効率としました。

(1段階良くなったものを「改善」として3者を合わせた改善率で評価する方法もありますが厳しめの基準を採用しました。改善率、有効率の結果は表2を参照して下さい。)

  • 図2

  • 表3

副鼻腔炎(蓄膿症)の手術費用

3割負担
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅰ型(副鼻腔自然口開窓術) 10,800円
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型(副鼻腔単洞手術) 30,000円
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) 74,730円
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型(汎副鼻腔手術) 96,240円
  • すべての手術に健康保険が適用されます。
  • 副鼻腔炎(蓄膿症)に対する手術は病気の程度によって表のいずれかから選択します。
  • 鼻内上顎洞開窓術、鼻内篩骨洞手術、鼻内上顎洞篩骨洞根本術 は内視鏡加算1000点(¥3,000)が加算されます。
  • 手術費用以外に術前の検査料、再診料、術後の薬剤料が加わります。

副鼻腔炎に関するQ&A

近くの耳鼻科で鼻の中を見ただけで副鼻腔炎と言われましたが鼻を覗いただけで副鼻腔炎は診断できるのですか?

急性の副鼻腔炎で膿性の鼻汁が大量に鼻の中に溜まっているような時、あるいは鼻茸(ポリープ)が鼻の中に大きく見える時は肉眼的にも鼻腔炎の診断は可能かもしれません。しかし慢性化しているものとか明らかなポリープがないものは見ただけでは副鼻腔炎の診断が困難な場合が多く、少なくともファイバーなどの内視鏡で鼻の中を見て、レントゲンで副鼻腔の状態を確認することが必要です。なおレントゲンでは判別困難な副鼻腔もあるので、副鼻腔用の CT で確実かつ正確な診断をお勧めします。

副鼻腔炎と診断されましたが、数日抗生物質を服用したら症状がなくなりました。このまま放置しておいていいですか?

副鼻腔炎は程度によっては数日間のお薬で症状がなくなることも少なくはありません。ただ多くの場合症状がなくなっても副鼻腔の炎症は未だ持続しておりますのでそのまま放置すると再度悪化してますます重症化する可能性もあります。副鼻腔炎の治療には CT などで画像上も炎症所見が十分に改善するまで治療することをお勧めします。

副鼻腔炎の治療にクラリスという抗生物質を処方されましたがもう2ヶ月ぐらい飲んでいます。こんなに長い間抗生物質を服用していても大丈夫ですか?

慢性副鼻腔炎の薬物療法では14員環マクロライドを少量で長期投与するのがガイドライン上も勧められています。これはクラスだと200 mg程度で常用量の約半分の量であり菌の交代現象などの副作用は起こりにくいとされています。また投与期間も3ヶ月から長くて半年ぐらいですが、効果が認められない場合は漫然と続けるのではなく手術などの他の治療法を検討すべきだと言われています。

上の歯が痛くて歯医者さんに行ったら歯は問題ないと言われました。これも副鼻腔炎ですか?

歯が原因で副鼻腔炎になることはしばしばあります。これを歯性上顎洞炎(副鼻腔炎)と言いますが、虫歯や虫歯治療が不完全の場合に起こりえます。レントゲンでは診断が難しい場合もありますが、副鼻腔炎用のCTであれば診断が可能です。(「正確で迅速な診断」のCT所見を参照して下さい。)
歯が原因の場合は口腔外科での治療をお勧めします。当院では提携する口腔外科に紹介し鼻の治療と並行して治療していただきます。歯が原因の場合は口腔外科の治療のみで副鼻腔炎が治る場合もあります。ただし、ある程度以上副鼻腔炎が進行していれば歯の治療とは別に副鼻腔炎の手術が必要な場合もあります。

近くの先生に副鼻腔炎と言われましたがなかなか治療に通えません。放置しても大丈夫でしょうか?

副鼻腔炎は悪化時のみ薬を飲むだけで一時的には症状が治まる時もあります。ただ、どんな病気にも共通しますが、それでは根本的に治ってはいませんので、きっちりと治しておかないと知らない間に進行して治りにくくなります。
副鼻腔炎の場合は悪化すると稀ながら眼の症状や頭蓋内合併症が起こる場合もあります。また嗅覚障害を伴っている時は進行すると嗅神経のダメージが強くなり、手術しても回復しない場合もありますので、やはり早期の治療が望ましいと思います。

しばしば頭痛が起こりますが、これって副鼻腔炎でしょうか?

頭痛の原因は様々ですので一概には言えませんが副鼻腔炎で頭痛が起こることも少なくありません。
副鼻腔炎に伴う頭痛で多いのは前頭部(眉毛の裏あたり)両目の間、後頭部、頬の裏などでそれぞれ、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞と呼ばれる副鼻腔炎が原因で起こることがあります。

  • 副鼻腔炎図1
  • 副鼻腔炎図2

副鼻腔炎に伴う頭痛は「重い感じ」「押される感じ」が多く「拍動性のズキズキした痛み」や「刺すようなキリキリした痛み」とは異なります。また朝より夕方にかけて痛くなったり、うつむくと痛い、叩くと響く、歯が痛いなども特徴的です。CTで確認すれば副鼻腔炎が原因かはほぼわかります。

副鼻腔炎の手術に関するQ&A

副鼻腔炎は再発をしやすく手術しても再びなるという話を聞いたことがありますが本当ですか?

副鼻腔炎の手術は病的な粘膜を掃除し、副鼻腔と鼻の中を広く開放して通気性や換気を高めることが目的となります。扁桃腺や盲腸などのように取れば二度と生えてこないというものではなく、粘膜そのものは再生しますのでそこに細菌感染や体質などによっては再び副鼻腔炎が起こる可能性はあります。ただ、その頻度は様々ですが、一般の副鼻腔炎として当院で行なっている手術では再発して再び手術する必要性は2%もありません。
再発しやすいと言われている好酸球性副鼻腔炎でも保存的治療で症状が抑えられていれば再手術までする必要性がないことがほとんどで、当院では再手術する割合は5%以下です。

副鼻腔炎の手術は痛いとか腫れる、あるいは長い間の入院が必要だと聞いたことがありますが本当ですか?

以前行われていた肉眼で行う方法では副鼻腔炎の手術は術後に顔が腫れたり、長い間出血したりというこもあり、片側の手術で約2週間の入院が必要でした。しかし20年ほど前からは内視鏡下に行う手術が主流となっていて、その場合はほとんど顔が腫れるとか大量の出血をするということはありません。また以前は術後数日間詰め物をするのが一般的でしたが、当院では翌日に鼻の詰め物の一部を抜きます。これによってある程度は鼻で呼吸ができるようになりますし、疼痛も軽くなります。術後の痛みは個人差がありますが数日間は定期的に鎮痛剤を処方します。これを服用していただけば、それほど強い痛みを感じる事は少ないと思います。
現在、入院期間は一般的な病院でも一週間程度ですが、当院では全ての症例が日帰りの局所麻酔か一泊二日での全身麻酔下で行っております。日帰りか一泊二日かは重症度や患者さんの希望によって決定します。

喘息もあるのですが、喘息があると副鼻腔炎の手術ができないと言われましたが本当ですか?

副鼻腔炎に喘息はしばしば合併します。当院で行う副鼻腔炎手術の2~3割は喘息合併ですが、そのために手術ができなかったことはありません。喘息をともなう副鼻腔炎は好酸球性のことが多いですが、副鼻腔炎がよくなると喘息も改善することが知られており、喘息のコントロールのためにも、むしろ副鼻腔手術は望ましいと思います。

副鼻腔炎がありますが手術は怖くてためらいがあります。放置しておいたらどうなりますか?

手術に恐怖感があることは当然の事だと思います。ただ、現在の副鼻腔手術は痛みや出血も少なく、短期滞在で行われるようになってきており、ナビゲーションシステムなどもあって安全性も高まっております。当院でも重症度によって日帰りや局所麻酔や一泊二日での全身麻酔手術を行っております。また全身麻酔の場合はナビゲーションシステムも導入して安全に手術が行えるように努めております。多くの病気に共通しますが放置しておくと徐々に重症化していき治りにくくなります。また、眼や頭の合併症の可能性もでてきます。嗅覚障害も進行すると手術では治らない場合もあります。早期の場合はお薬や手術で回復しますが嗅神経が障害されてくると手術を行っても十分には回復しない場合がありますので長期間放置していくのはお勧めできません。嗅覚障害に関してはこの記事も参考にしてください。

嗅覚障害の治療 –臭いが分からない場合の診断と原因-

日帰り手術で大丈夫ですか?

当院では重症度や患者さんのご希望によって日帰りの局所麻酔あるいは一泊二日の全身麻酔の手術を行っております豊富な知識と実績をもとに行っておりますので現在まで退院を延期した方や帰宅できなかった方おられません。ただし、重症の他の疾患を伴っていて、内科的な管理も必要な場合などは大病院での入院手術が望ましいので、提携医療機関を紹介します。

手術後の夜に具合が悪くなった場合はどうすればいいですか?

手術を行うすべての患者さんに当院の電話番号と緊急時用の院長の携帯電話番号をお伝えしております。手術当日に関わらず何かあった場合はそちらにお電話頂ければ随時対応いたします。

術後の注意点や安静について注意点はありますか?

手術後数日から一週間程度は粘膜が反応性に一時腫れますので鼻が詰まります、またやや粘稠な鼻水に多少血が混じったものも鼻の中にたまります。手術翌日はご帰宅後安静にしていただく方が良いと思いますが、デスクワーク程度ならその次の日から徐々に始めてもらって結構です。汗をかくような仕事の場合は4~5日後から徐々に始めてもらって結構かと思いますが、動くことによって少し血が滲むようなら押さえて安静にしてもらえばほとんど止まると思います。その場合はまた徐々に仕事の強度を上げて行ってください。
稀には処置が必要な出血が術後におこる場合があります。すぐに医療機関を受診でいないようなゴルフのラウンドや飛行機は3~4週間程度は避けて下さい。

合併症はありますか?

合併症の頻度は決して多くはありませんが、手術ですのでその可能性は皆無ではありません。比較的多い合併症としても可能性は1%以下の頻度ですが術後出血があります。ただし、ほとんどが外来で止血処置することによってそのまま帰宅して頂ける程度です。また、0.5%程度の頻度で起こるのが手術中の出血が目の皮下組織に入ることで目の周りが軽い打撲傷の後のように少し腫れて色がつく場合があります。これは放置しておいても1~2週間でほぼ消失します。
それ以外のまれな合併症として髄液漏がありますが、この場合は手術中に髄液が漏れたところを閉鎖する処置を行います。この頻度は毎日のように手術をしていても10年間に1度あるかないか程度かと思います。

監修医師

医院名 医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック
院長名 川村繁樹
資格 医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医

院長